コラム

相手に強要されて慰謝料を支払う旨の合意書を作成してしまった場合

「合意書にサインしないと勤務先に連絡する」「合意書にサインしないと自室から出ていかない」等と脅迫・強要的な事情があり,合意書の内容に納得していないにもかかわらずサインをした場合,合意書の内容とおりの慰謝料を支払う必要があるのでしょうか。

1 合意書にサインする前に弁護士に相談をする

全く回答になっていないことを承知でいいますが,合意書にサインをした時点で不利な状況からのスタート,それを覆していくことに多大なエネルギーがかかることは否定できません。

2 それでも合意書にサインをした場合はどうするか

  1. (1) 弁護士に一刻も早く相談してください。合意書締結日から近い日に合意書の内容に異議を唱える方が合意書の効力を争える可能性が出てきます。合意書の内容を一部でも履行してしまうと,その合意書の内容に納得していたものとして中々合意書の効力を争うことが厳しくなります。
  2. (2) どのように覆していくか
    よく使う法的構成が強迫(民法96条1項),心裡留保(民法95条),公序良俗違反(民法90条)を理由とした合意書の無効の主張になります。
    合意書作成前に相手方からどのような具体的圧力を受けたか(細かく述べていく必要があります),どこで合意書を作成したか(他人に助けを求めにくい場所か),合意書作成の場に誰がいたか(相手側に複数人いて自身は一人か),合意書の内容自体に不自然な点はないか(清算条項がない,支払期日の定めがない,著しく高額な違約金額)といった事情を述べて,合意書の効力を争う形になります。
    上記の点に関する証拠があれば猶更戦いやすいです。
    実際どうなっているかというと,具体的な事実・根拠を示して合理的な主張を展開していけば,合意書記載の金額より相応に減額した形で再和解できるケースを当職は経験しています。
  3. (3) 最終手段は自己破産
    自身に特に守るべき資産(代表的なのが自宅不動産とかローン有の自動車)もなく,自身に他に負債があれば,自己破産も選択肢の一つです。
    よほど悪質な事情がなければ,不倫の慰謝料は自己破産によって免責されるものでありますから,不倫の慰謝料の減額を考えるよりも破産を選択してしまった方が話の早いケースもあります。
    実際に自己破産をしなくとも,自己破産の選択肢を交渉手段として合意書の金額からの相応の減額が協議で実現したケースも当職の経験上あります。
    住宅ローンのある住宅を抱えている場合は個人再生の選択肢もあります。
    自己破産・個人再生についても当事務所は多数取り扱っていますので,
    こちらのページ(個人再生・債務整理・自己破産の無料法律相談 弁護士法人仙台駅前法律事務所)をご覧にいただければと思います。

不倫の開始前に慰謝料請求者の婚姻関係が破綻していたという主張

相手の配偶者と不貞行為をしていたのは事実であるが,不貞関係の開始時点で既に慰謝料請求者らの婚姻関係は破綻していた,又は破綻していたと聞いていたから,自身は責任を負わないという反論が考えられます。

この反論は現実として成り立つものかを考える必要があります。

1 不貞開始前に婚姻関係が破綻していたか

  1. (1) 最高裁判例でも,不貞関係の開始時点で既に慰謝料請求者の婚姻関係が破綻している場合には慰謝料支払義務は負わないという考えになっています。
    問題は,どのような事情があれば,慰謝料請求者の婚姻関係が破綻していたといえるかになります。
  2. (2) まず,慰謝料請求者が配偶者と同居を継続している場合は,家庭内別居やDV等の事情があったとしても,その夫婦の婚姻関係が破綻していたということは難しいかと思います。
  3. (3) では,慰謝料請求者が配偶者と別居をした後に不貞関係になったのであれば必ず慰謝料支払義務は免れるのでしょうか。
    別居開始直後に不貞関係を開始していたのであれば,その夫婦の婚姻関係が既に破綻していたとは中々評価されず,慰謝料支払義務を免れるのはなかなか厳しいかと思います。では,どれくらいの別居期間があれば破綻していたという話になりますが,一般的には3年間別居が継続していれば破綻していたと評価されやすいかと思います。ただ,この3年という数字は絶対的なものではなく,相手の婚姻期間の長さと比べて別居期間がどうかという形で婚姻関係の破綻と評価できるかが決まってくるかと思います。例えば,婚姻期間が1年であれば,半年の別居でも婚姻関係は既に破綻していたと評価される可能性があるかと思います。他方,婚姻期間が25年であれば,別居期間3年でも裁判官によっては婚姻関係の破綻は生じていないと評価される可能性があります。
    後は相手夫婦の別居の経緯・事情とかも重要になります。不貞以外の要因,例えば,DV等の事情により相手夫婦が別居したというような事情があれば,別居期間の長さと合わせて婚姻関係が既に破綻していたといえる可能性があります。
  4. (4) このように,不貞開始前に婚姻関係が破綻していたから慰謝料支払義務はないという主張の成立は現実的には中々難しい面があります。
    他方,DV等の不貞以外の要因があったり,短期でも別居期間が不貞開始前にあれば,元々相手夫婦の婚姻関係は悪化していたとして,慰謝料の減額要素となることは裁判でも多々ある印象です。

2 不倫関係になる前に相手夫婦の婚姻関係が破綻していると信頼していた場合

  1. (1) 不貞行為をするにあたって不貞配偶者から「夫婦関係は既に終わっている」「離婚の話が進んでいる」等の言葉を信頼して実際に関係を持ったから,故意・過失がないとして自身は責任を負わないという主張も多々あります。
    相手夫婦の婚姻関係の破綻を信頼していれば,慰謝料支払義務から免れるのでしょうか。
  2. (2) 結論からいうと,特に不貞配偶者の言葉を信頼していただけでは責任を免れることはないです。金額の減額自体も特に裁判では難しい印象があります。
    実際に相手夫婦の婚姻関係が破綻していると誤信してもやむをえないような事情,例えば,不貞配偶者が単身赴任していたために相手夫婦の別居という外形があり,かつ,配偶者との関係が悪く別居しているという不貞配偶者の言動があり,かつ,単身赴任先の室内でも夫婦での生活の実態がないというような場合に,慰謝料の減額要素となる可能性が出てきます。

貞操権侵害を理由とする慰謝料請求

1 貞操権侵害とは

貞操権とは、性的な自由に不当な干渉を受けない権利、純潔を侵害されない権利のことです。既婚者なのに相手が「独身」と偽って交際を継続していた場合、相手は自身の性的な判断の自由を不法に侵害したことになるので、「不法行為」責任により損害賠償請求権が成立する可能性があります。

2 貞操権侵害を理由に慰謝料請求ができる場合

  • ⑴ 男性が既婚者であるにもかかわらず未婚者と偽っていたこと
    交際中に相手がずっと「独身」と言い続けており、それがもっともらしくて、被害者がだまされても仕方がないと言えるような状況であったなら、慰謝料請求できる可能性があります。
  • ⑵ 肉体関係があること
    貞操権侵害となるためには、肉体関係(性的関係)があったことが必要です。たとえ交際していても、プラトニックな関係であれば基本的に貞操権侵害にはなりません。
  • ⑶ 男性側の悪質性が強いこと
    女性が判断能力不十分な未成年、男性側から積極的に男女交際を誘った、半ば無理やり性交渉を行った、女性を妊娠させた等の事情があれば男性側に悪質性が強いといえ、慰謝料請求しやすい状況となります。

3 慰謝料の相場

貞操権侵害の慰謝料額は、50万円〜200万円程度のケースが多いと思います。慰謝料の金額は、婚活サイトの利用や結婚式の開催の準備等男性側がいかに巧妙に独身者と偽っていたか、肉体関係を伴う交際関係の長さ、女性側の妊娠の有無などの事情を総合的に考慮されたうえで決定されます。

ダブル不倫について

ダブル不倫(W不倫)とは、既婚者同士の不倫・浮気のことを言います。どちらも家庭を持っているということがポイントです。夫・妻が不倫・浮気をしていたら、夫・妻とその不倫・浮気相手に対して慰謝料を請求できます。そして、もちろん、ダブル不倫の場合でも慰謝料を請求できますが、通常の慰謝料請求とは異なる点もあります。

1 不倫相手に慰謝料請求をする場合の注意点

ダブル不倫では、不倫・浮気相手に対して慰謝料を請求した場合、不倫・浮気相手の配偶者も、自分の配偶者に対して、慰謝料を請求してくる可能性があります。
ここで、もし自分が離婚を考えていない場合には、一般的には夫婦の家計は同一(財布は一緒)なので、自分の家計から不倫・浮気相手の配偶者に対して慰謝料を支払わなければならなくなります。仮に、自分が受け取る慰謝料と自分の配偶者が支払う慰謝料が同額だったときは、結局は、差し引きゼロということになります。
さらに、自分は離婚しなくて、不倫・浮気相手の夫婦がダブル不倫を理由に離婚した場合には、自分が受け取る慰謝料よりも、自分の配偶者が支払う慰謝料の方が多くなる可能性があります。この場合には、差し引きで、自分の家計が損をするという結果となってしまいます。
もちろん、不倫・浮気相手が自身の配偶者には黙ったまま慰謝料の支払に応じるということはあります。
とはいえ、離婚を選択せずに不倫・浮気相手に対して慰謝料を請求する場合には、自分の家計が損をする可能性もありますので、ダブル不倫の場合に慰謝料を請求するかどうかについては、慎重な判断が必要とされます。

2 不倫相手から慰謝料請求された場合

ダブル不倫では、不倫・浮気相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、自分の配偶者も、不倫・浮気相手に対して、慰謝料を請求することが考えられます。
ここで、もし自分が離婚をせず、不倫・浮気相手の夫婦も離婚しない場合には、夫婦の家計が同一(財布は一緒)であることを前提とすると、自分が不倫・浮気相手の配偶者に支払う慰謝料と自分の配偶者が受け取る慰謝料が同額だったときは、差し引きゼロということになります。この点で、不倫・浮気相手の配偶者には慰謝料を請求するメリットがなくなります。そこで、お互いに慰謝料を請求しないという形で和解(ゼロ和解)できる可能性があります。
もっとも、このゼロ和解は、自分の配偶者が不倫・浮気相手に慰謝料を請求することが必要となりますので、自分の配偶者に不倫・浮気の事実を隠したままにゼロ和解を目指すことは困難です。自分の配偶者には分からないようにして対応したいという場合には、一定の金額の慰謝料を支払う必要が出てくるわけです。

 

妊娠中絶を理由とする慰謝料請求

交際相手との性交渉は双方の同意の上で行われるのが通常です。したがって,妊娠したことは双方の同意の上での行為によるものといえます。
また,妊娠中絶することについても,相手が妊娠中絶を要求し,これに応じて行ったとすれば,妊娠中絶も同意の上での行為ということになります。
したがって,原則的には権利侵害行為がないため,たとえ中絶により精神的・肉体的苦痛が生じていたとしても,男性に対して慰謝料の支払いを求めることはできません。

1 中絶による慰謝料請求ができる場合

レイプされた場合,実際には避妊していないのに避妊していると嘘を言って性交渉に臨んだ場合,婚約して性交渉をしたのに実際には妻がいるため中絶を求められた場合は,性交渉自体が権利侵害行為にあたる,あるいは,嘘を言ったことが権利侵害行為にあたるといえる可能性があり,慰謝料を請求できる場合があります。

それでは,上記以外の場合には全く慰謝料の支払いを求められないのでしょうか。
このような場合でも,慰謝料を認めた東京高等裁判所の裁判例(東京高判平成21年5月27日判時2108号57頁)があります。
同裁判例は,双方が合意の上で性行為におよんだ結果,妊娠したからといってそれ自体が不法行為を構成することはないことを前提としつつ,女性は妊娠により直接的に肉体的及び精神的苦痛を受け,さらに経済的負担を受けるのであるから,男性としては,その不利益を軽減し,解消するための行為をする義務があるとして,男性に妊娠後にこのような行為義務を認めています。そして,同裁判例では,子を産むかどうするかについて,男性が具体的な話し合いをせず,子を産むか,中絶手術を受けるかどうかの選択を女性の側にゆだねるのみであったなどの事情から,男性の義務違反を認定し,慰謝料合計200万円の半額の100万円の支払いを男性に命じています(さらに中絶のための診療費用等についても半額の支払いを認めています。)。この裁判例を一般化できるか疑問はありますが,中絶により慰謝料請求が認められる余地はあるということになります。妊娠の報告を受けた男性がその後何の応答もせず放置した場合,妊娠の報告に対して一方的に中絶するように伝えるだけで話合いに応じない場合は請求の余地がある可能性があります。

2 慰謝料の相場

慰謝料の額については,性交渉自体が合意によるものではなく,レイプなどの権利侵害行為にあたる場合には高額になる傾向があります。200万円以上、場合によっては1000万円近くの慰謝料を請求ができる可能性もあります。
他方、その他の場合、例えば結婚を前提に交際し、性交渉をしたのに実際には妻がいるため中絶を求められた場合、「妻とは離婚する」といって性交渉に及んだのに妊娠したとたん中絶を求められ別れるといわれた場合などは、それより低額になる場合が多いです。
また,先程の東京高等裁判所の裁判例は特異な例ではありますが,慰謝料の総額を200万円と認定し,その半額の支払いを命じています。

3 女性が中絶をせずに出産という選択をした場合の男性の責任

女性としては男性に子の認知を求め,養育費の請求をしてくる可能性があります。まず,男性としては女性が妊娠した子が本当に自分の子であるかDNA鑑定をする等の確認は必要ですが,鑑定上子と男性が父子関係と認められた場合は認知に応じざるをえないでしょう。認知を拒否していても調停・訴訟でいずれかは認知をすることになります。認知後は未成年の子については養育費支払義務が発生しますから,算定表等に従って養育費を請求することになります(詳細は養育費の項参照)。

 

 

内縁破棄等を理由とする慰謝料請求

好意を抱いていた異性と同棲を続け,事実婚状態の方もいるかと思います。しかし,不当に急に別れを切り出されて傷つき,慰謝料請求を考える方もおられる方と思います。では,どのような場合に慰謝料請求が認められるのでしょうか。

1 そもそも内縁が成立しているのか

内縁とは法的には、「夫婦となる意思をもって夫婦共同生活を送っているものの、婚姻届を出していないために、法律上婚姻しているとは認められない男女の関係」をいいます。ここで、結婚の約束にとどまる婚約と、実際に夫婦としての共同生活を送っている内縁とは区別されます。また、夫婦となる意思をもって夫婦としての共同生活を送っているかどうかにより、単なる同棲とも区別されます。もっとも、同棲か内縁かの判断は微妙なことが多く、内縁と認められるには一定のハードルがあります。
実際に裁判になると共同生活の期間やその内実,家計の同一性,親族との関係、子の有無のような事情を考慮して、内縁が成立していると認められるかどうかが判断されています。

2 そもそも内縁が不当に破棄されたといえるのか

慰謝料の請求が認められるためには、正当な理由なく内縁が不当に破棄されたことが必要です。内縁が破棄される場合の全てについて、慰謝料の請求が認められるわけではないことに注意が必要です。内縁の破棄が正当な理由のないものかどうかは、その理由の具体的内容や原因、方法等を踏まえて判断されます。内縁破棄については、例えば、内縁期間中に、風俗店の利用や盗撮を繰り返し相手方の信頼を失った上、信頼回復に向けた努力が見られないというケースや、男性の父親の暴言などが原因となり内縁関係が破たんしたケースでは、正当な理由のない内縁破棄であると認められた裁判例があります。

3 内縁関係の状況で不貞相手に慰謝料請求は可能か

内縁関係が成立していると法的に評価できれば,不貞相手に慰謝料請求をなすことは可能です。

婚約破棄を理由とする慰謝料請求

結婚に先立ち、男女間で婚約をすることがあります。
しかし、婚約を取り交わした後に婚約を一方的に破棄された場合、破棄された側は、精神的に大きく傷つくことになります。そればかりか、結婚のためにお金をかけて準備していたり、仕事をやめてしまっていたりしている場合には、それが財産的(金銭的)な損害となって、破棄された側に大きくのしかかってくることになります。
このような場合に、婚約を不当破棄した者に対して、慰謝料等の損害賠償を請求することができる場合があります。以下、慰謝料請求のポイントを考えていきます。

1 婚約がそもそも成立しているのか

婚約は、男女間に将来結婚しようという合意があれば、成立します。理屈上は、口約束だけでも婚約は成立します。しかし、相手方が婚約の成立を否定してきた場合には、当事者間で水掛け論となってしまいます。そこで、婚約の成立を証明する客観的な証拠・間接事実が必要となります。結納や婚約指輪の交換などの儀式は、婚約の成立を証明する一つの有力な証拠となるのです。
しかし、結納や婚約指輪の交換のような儀式を行っていない場合もあるでしょう。そのような場合には、結婚をほのめかすメールや手紙など、できるだけ婚約が成立したことを示す証拠を集めましょう。相手が結婚を公言していた場合には、それを聞いた第三者の証言も証拠となる場合があります。

2 婚約破棄をすることに正当な理由があるのか

婚約が成立すると、婚約した者は「正当な理由」もなく婚約を履行しない相手に対して、損害賠償を請求することができます。裁判所は、正当な理由の有無については非常に慎重に判断していると考えられます。
⑴  婚約破棄が正当なものとして許される例
①相手の不貞行為
②相手から虐待、暴行、重大な侮辱を受けた
③相手が結婚式直前に無断で家出して行方をくらました
④相手方に結婚式直前や初夜における社会常識を逸脱したいような言動がある
⑵ 正当な理由が認められない例
①性格の不一致
②容姿に対する不満
③年まわりが悪い
④親の反対にあった
⑤好きな人ができた
⑥信仰をやめない

3 慰謝料の相場

慰謝料額は、精神的な苦痛を金銭的に評価して決定するものですから、一律の額を提示するのは難しく、認められる額は人によって異なります。もっとも、慰謝料として認められたもののなかには、50万円から200万円程度のケースが多いので、これを一つの相場として見ることができます。そのほか、結婚式場や新婚旅行などの申込金、キャンセル料、披露宴招待状の発送費用、新居用のマンションの敷金等を請求できる場合があります。これらについては、実際に支出した費用が、賠償額の基準となります。

4 婚約者の親に慰謝料請求できるか

婚約者の親の反対にあったために婚約を解消することになったから、婚約者だけでなく、婚約者の親に慰謝料を請求したいという場合も少なくないのではないでしょうか。
婚約の不当破棄に親が関与している場合、その親が単に反対するだけでなく、積極的に干渉、妨害してきたといえる場合には、その親に対しても損害賠償を請求することが可能な場合があります(徳島地裁判決昭和57年6月21日)。

5 婚約者の不貞相手に慰謝料請求できるか

婚約者の浮気相手に慰謝料を請求できる場合があります。もっとも、この場合は、浮気相手が婚約相手と出かけたことがあるというだけでは足りず、婚約の事実を知っていたのに肉体関係を結んだというようなかなり悪質性の高い場合に限られると考えられます。

離婚後の子の氏と戸籍

夫婦が離婚する場合に未成年の子どもがいる場合には、子どもの親権者を決めます。自分が子どもの親権者となった親は、子どもと一緒に暮らすようになりますが、この場合に自分の姓と子どもの姓が異なる結果になるケースがあります。
結婚する際に自分が相手の姓に変更していた場合には、離婚時にその姓を元に戻すことが可能です。旧姓に戻るということです。ところが離婚しても子どもの姓はそのままになります。すると、旧姓に戻った自分の姓と、婚姻時の姓のままになっている子どもの姓が異なる結果になってしまうのです。
このように、子どもの親権者になったからといって、当然に子どもと同じ姓(氏)になるわけではないので、注意が必要です。
さらに、子どもの戸籍にも注意が必要です。離婚した場合、自分は当然、元の結婚相手の戸籍からは出ることになります。しかし、子どもは当然には相手の戸籍から抜けません。子どもの戸籍は、相手方の戸籍内に残ったままになってしまいます。
よく、親権者になったら子どもの戸籍も自分の戸籍に入ると思い込んでいる人がいますが、実際にはそのようなことにはなりません。自分と子どもの戸籍は別々になってしまうのです。
このように、離婚後の子どもの氏と戸籍は、婚姻時と同じ元のままになっていることには注意が必要です。

1 子どもの氏の変更方法

離婚をして子どもの親権者になっても、子どもの氏は婚姻時のままになります。
子どもの氏を変更するには、家庭裁判所に申立をして、子の氏の変更を認めてもらう必要があります。具体的には、住所地の家庭裁判所に行って「子の氏の変更許可の申立」という申立をします。裁判所において氏の変更が認められるには、変更を認める必要性などが問題になりますが、「親権者である母親と同じ姓を名乗る必要がある」などの記載をすれば通常は認められます。
子の氏の変更許可の申立をする場合には、戸籍謄本等の資料も必要になるので、申立の際には持参しましょう。
そして、申立手続きを終えると、後日裁判所から子の氏の変更許可の決定書が送られてきます。送られてきた決定書を役所に持参して手続きをすれば、子どもの氏を自分と同じものに変更することが出来ます。

2 子どもの戸籍の変更方法

先ほど説明したとおり、離婚した場合に子どもの親権者になったとしても、子どもの戸籍は元の婚姻時の戸籍に残ったままになります。たとえば結婚して夫の戸籍に入っていた場合には、自分が親権者になっても子どもの戸籍は夫の戸籍に残ったままです。
この場合には、上記の家庭裁判所での子の氏の変更許可の申立を利用します。子の氏の変更許可の申立をすると、子どもの姓が変更されます。この決定書を役所に持参して子どもの姓の変更の手続きをすると、その際子どもの戸籍も新たに編成されて、自分の籍に入ることになります。
この場合には、自分は実家の戸籍に戻るのではなく、新たに子どもと一緒に入る戸籍が編成されることになります。よって、もし離婚時に実家の戸籍に戻っていたとしても、子どもの戸籍を変更する手続きによって、新たに戸籍が編成されることになります。新しい戸籍には、自分を筆頭者として、自分と子どもだけが入っているという状態になります。

離婚後の戸籍・氏

1 離婚後の戸籍の選択

夫婦が離婚する場合には、離婚後の自分の新しい戸籍をどうするかという問題が発生します。結婚の際に、相手方の戸籍に入っていた方の当事者は、離婚によって婚姻時の戸籍からは出ることになるので、自分の離婚後の籍をどこに置くかを決めないといけないからです。
この場合、自分の新しい戸籍については2つの方法から選ぶことが出来ます。
1つ目は、自分だけの新しい戸籍を編成する方法です。もう1つは、もとの実家の戸籍に戻る方法です。
自分だけの戸籍を編成する場合には、その戸籍には自分一人しか入っていません。もし子どもの籍を一緒に入れたいなら、裁判所に子の氏の変更許可申立をして、その新しい戸籍に子どもを一緒に入れる手続きを執らないといけません。また、自分一人の戸籍なので、たとえば家族に戸籍謄本をとってきてもらうなどの手続きは利用出来なくなります。
離婚後、実家の戸籍に戻る場合には、いったん婚姻によって出た戸籍に再度戻ることになります。家族が一緒の戸籍なので、家族に戸籍謄本を取り寄せてもらうことも可能です。ただし、この場合には、戸籍にいったん×がついて、再度その籍に入り直す形になるので、一見した離婚した経験がある事実が明らかになってしまうというデメリットがあります。このことがあるので、離婚経験がある人はバツ一などと言われるのです。
このように、離婚後の戸籍については、新しい戸籍を編成するか、元の戸籍に戻るのかについて選ぶ必要があります。

2 離婚後の氏の選択

離婚した場合には、離婚後の氏も決めないといけません。結婚時に結婚相手の姓に変えていた場合には、離婚によって旧姓に戻ることが原則です。ただし、旧姓に戻るとなると、たとえば預貯金通帳や免許証など、各種の書類や手続きにおいて名前を変更しなければならないので、非常に手間になります。また、離婚したことが周囲に明らかになってしまうデメリットもあります。そこで、離婚後であっても、婚姻時の姓を名乗り続けることが出来る制度がもうけられています。これを、婚姻続称と言います。
婚姻続称の制度を利用すれば、離婚後も結婚していた際に使っていた名字をそのまま利用することが出来ます。婚姻続称をしたい場合には、離婚時や離婚後に役所に届け出ることが必要です。ただ、婚姻続称の届出をするには、期間があります。期間を超えると、役所での届出はでき無くなりますので注意が必要です。
婚姻続称の届け出期間は離婚後3ヶ月です。よって、離婚後も婚姻続称したい場合には、早めに役所に行って、手続をしましょう。ただ、離婚後どちらの姓を利用するか、迷ってしまって3ヶ月が過ぎてしまうこともあります。もしこの期間を超過してしまった場合でも、婚姻時の姓を利用出来ないということにはなりません。この場合には、家庭裁判所に申立をして「氏の変更許可」の決定をしてもらう必要があります。氏の変更が認められるためには、変更の必要性などを説明する必要があります。
そして、裁判所で氏の変更許可の申立が認められれば、氏の変更許可の決定書を役所に持参して手続をすることによって、婚姻時に使っていた姓を利用することが出来るようになります。

離婚に伴う慰謝料

離婚にともなう慰謝料とは、配偶者の有責行為(結婚している人と浮気、不倫などの不貞行為)によって「離婚を余儀なくされたために被る精神的苦痛に対する損害賠償」のことです。
とはいえ、慰謝料は離婚する際に必ず支払われるものとは限りません。また、有責行為の程度によっては、慰謝料が認められないこともありますので注意が必要です。慰謝料については離婚協議・離婚調停の中で離婚等の問題と同時に解決を図ることも可能です。

1 慰謝料請求が認められない場合

・不倫より前に婚姻関係がすでに破綻していた。
・不倫相手が婚姻している事実を知らなかった。
・夫婦のどちらにも有責行為(結婚している人と浮気、不倫などの不貞行為)の理由はないけれど、性格の不一致や価値観の相違で離婚するなど、離婚理由が夫婦どちらの責任ともいえない。
・配偶者の有責行為(結婚している人と浮気、不倫などの不貞行為)が原因で慰謝料を請求し、慰謝料がすでに支払われ、受け取っている。

2 消滅時効

離婚にともなう慰謝料請求は、3年で時効となりますので、原則、離婚が成立した日から3年を経過してしまうと、慰謝料を請求することができません。もし、時効完成間近である場合には、訴訟といった時効中断の手続をとる必要があります。

3 慰謝料が高額になる要素の例

① 婚姻期間が長いと精神的苦痛の度合いは大きいとされ、慰謝料が高額となる傾向があります。
② 慰謝料を請求される側の年収が高いほど、慰謝料が高額となる傾向があります。
③ 慰謝料を請求する側の年齢が高いほど、慰謝料が高額となる傾向があります。
④ 慰謝料を請求される側の社会的地位が高かったり、収入が高いと思われる職業に就いている場合、慰謝料が高額となる傾向があります。
⑤ 養育が必要な子の数が多いほど、慰謝料が高額となる傾向があります。
⑥ 不倫で慰謝料が高額になりうる場合
・不倫の期間が長期に及ぶ。
・不倫が原因で夫婦が別居に至った。
・不倫相手と同棲している。
・不倫などの不貞行為を知ったことによる精神障害(鬱病など)を患った。
⑦ DV(身体的暴力)・モラハラ(精神的暴力)で慰謝料が高額になりうる場合
・DV、モラハラの頻度が多い、または期間が長期に及ぶ。
・暴力行為を受けた側に特別な落ち度がなく、DV,モラハラが始まった。
・DV、モラハラによるケガ、後遺症などの程度が重い、または精神障害(鬱病など)を患った。
⑧ 悪意の遺棄で慰謝料が高額になりうる場合
・別居期間が長期に及ぶ。
・悪意の遺棄を受けた側に特別な落ち度がないにも関わらず、別居に至った。
・専業主婦(または専業主夫)であるために収入がないにも関わらず、生活費を渡さない。
・健康であるにもかかわらず働かない。