コラム

離婚の結論自体が争いになっている場合に考えるべきこと②

1 婚姻を継続しがたい重大な事由

協議や調停で離婚が合意できず,裁判になった場合は離婚原因が認められなければ離婚ができませんが,民法は抽象的な離婚原因として「その他婚姻を継続した難い重大な事由」を挙げています(民法770条1項5号)。
不貞行為等が証拠により立証できなくても,これに該当するといえれば離婚につき合意できなくとも裁判で離婚ができることになります。「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻共同生活(夫婦関係)が破綻し,その修復が著しく困難な事由をいいます。
これは,夫婦が婚姻を継続する意思を失っており(主観面),夫婦関係を修復することが不可能である状態(客観面)を指します。
このような視点から,裁判所は何が「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかを下記の通りに個別のケースに応じて判断することになります。

2 DV

ドメスティック・バイオレンス(DV)という言葉でも知られる 「暴行・虐待」は、身体的な暴力だけでなく、無視や暴言などの精神的な暴力も含まれます。裁判においても、DVが原因で離婚が認められることがありますが、その際には証拠が必要 です。 具体的には,DVにより怪我を負った場合に通院した病院の診断書やカルテ類,110番通報をして警察が出動したケースでは警察の調書が残っている可能性もあるので警察に調書の開示をして証拠としていくことも考えられます。また,直接的にDVの相談をしていなくとも,子供のことを保健所に相談しに行った際に配偶者からの暴力について話をしたり,アザがあったことを調査員が記載しているケースもありますので,過去に相談をしたことがある場所においてその機関が保存している情報の開示が受けられないか検討することも考えられます。なお,暴力であっても,軽微な場合は,離婚原因として認められないことがあります。他方,一定以上の身体的暴力は,刑法上暴行罪,傷害罪として犯罪とされますが,このようなレベルの暴力であれば,離婚原因となる可能性が高いです。精神的暴力については明確に深刻な内容,程度ではないと離婚原因にはならないと思います。

3 性格の不一致や価値観の違い

性格の不一致や価値観の違いは,多かれ少なかれどの夫婦にも見られることですから,それだけでは離婚原因と認められません。他の事情によって婚姻関係が破綻しているといえる場合のみ離婚原因があるとして裁判で離婚ができます。具体的には一定期間の別居と合わせて主張していくことになるかと思います。

4 セックスレス

最高裁(最判昭和37年2月6日)は夫婦の性生活は婚姻の基本となる重要事項としているくらいですから,セックスレスという事実自体が婚姻を継続しがたい重大な事由として離婚原因に該当する可能性はあります。どれくらいの期間セックスレスであれば離婚原因に該当するかという点が次に問題となりますが,特に一般的な基準はないかと思います。福岡高判平成5年3月18日では,被控訴人と控訴人との性交渉は入籍後約5か月内に2、3回程度と極端に少なく、平成2年2月以降は全く性交渉がない状態であるのに、反面控訴人自身はポルノビデオを見て自慰行為をしているのであって、性生活に関する控訴人の態度は、正常な夫婦の性生活からすると異常と離婚原因を認定していますが,特殊な事例かと思います。なので,セックスレスだけでなく他に原因があれば複合的に離婚原因を主張していくべきかと思います。

5 モラハラ

モラハラの事例としてよく紹介される精神的に侮辱的な発言ですと、それだけで離婚理由として認められるのは難しいのではないかと思います。
なぜかというと、日常的なやりとりの文脈の中で出てくる問題ですから、その一言一言を取り上げて、「こんなひどい暴言がありました、だから離婚したいんです」と主張しても、なかなかそれだけでは裁判所としては離婚理由とは判断しにくいと考えられるからです。「死ね」とかそういうことを日常的に言っているような場合は別ですが、ただ単に「お前はバカだな」等(そのくらいの発言がひどいかどうかは別として)、それだけではななかな難しいと思われるところです。ですので、そういう意味で考えると性格の不一致と同じような扱いを受けてしまうので、離婚するためには別居期間を重ねて離婚を認めてもらうという方針になるでしょう。他方で、モラハラの例として挙げられているものとして、「精神的な不安定さが非常に強くて飛び降り自殺をしようとしてしまう」とか、「リストカットが止まない」とか、場合によっては「夫に向けて包丁を持ち出してくる」といった行為が度重なっているというケースがあります。このようなケースでは、具体的な行動の中身等をふまえて主張することで離婚が認められてくる可能性もあると思っています。

6 不貞に類する行為

不貞とまではいえないが,配偶者以外の異性と親密な関係にあり,それを理由に婚姻関係が破綻したといえる場合も「婚姻を継続しがたい事由」として離婚原因に該当する可能性があります。

7 配偶者の犯罪行為

配偶者が犯罪を犯したことを理由に即離婚原因が認められるわけではなく,犯罪行為の内容や程度,配偶者の犯罪行為により婚姻生活に重大な影響を及ぼしたかどうかで離婚原因が認められるかと思います。重大な犯罪行為であれば認められやすいのではないかと推測します。

8 配偶者の不労・浪費・借財

前回に触れた悪意の遺棄として離婚原因を主張していくことも考えられますが,そこまで至らなくとも家庭生活の経済的基盤を破壊する程度に仕事をしない・浪費や借入を繰り返すということであれば5号の婚姻を継続しがたい事由として離婚原因に該当する可能性があります。

9 長期間の別居

性格の不一致や軽微なモラハラ等それだけで離婚原因といえるか微妙な案件については長期間の別居を合わせて離婚原因を主張していくことになります。長期間の別居という事実があれ婚姻関係は継続しがたい事由として離婚原因が認められる可能性は高いです。どれだけ別居していれば婚姻関係の破綻が認められるかに関しては法律上基準というものが全く定められていません。ですので、何年になったらよいか、何年別居を続けたら離婚ができるかというご質問に対しては正確にはお答えすることができません。ただ、参考になるのが平成8年に出された法制審の「民法の一部を改正する法律案要綱」というものです。この中で、「別居が5年以上継続している場合」が離婚原因に追加されておりますので、5年別居が続いていた場合には離婚を認めてもいいんじゃないかというのが、実務上の考え方としてあるといえます。短いケースでは3年の別居で離婚原因が認められたケースもありますが,婚姻期間中の同居期間より別居期間の方が長かったりその他の事情を考慮して3年の別居で離婚原因が認められていると考えた方がいいかもしれません。

 

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